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デマと風評とレベル8 -2011年06月22日
震災後、ネット上でデマが飛び交っているという話があり、政府は冷静な対応を呼びかけるとともに、監視を強化するということがありました。
しかし筆者(当サイト管理者)は、”デマ”とされたものの半分くらいは、根も葉もあるものだったのではないかと密かに思っていました。実際、当初はデマとされたものが次々と現実化していることもあります。
もちろん、関東大震災の後にもデマが飛び交ったように、情報の取捨選択と冷静な行動が大切で、いたずらに根拠のない情報を広めることは慎まなければなりません。
ネット上でデマ 「冷静に反応を」枝野長官(サンケイスポーツ2011/3/12)
「千葉県市原市のコスモ石油千葉製油所の火災について、『有害物質が雨などと降るので注意』とするツイッター上の書き込みやメールが拡散。コスモ石油が『そのような事実はない』と否定するコメントをウェブサイトに掲載する騒動もあった。
12日午後になり、福島第1原発周辺で放射性物質が検出され、炉心溶融(メルトダウン)の可能性が指摘されると真偽不明の発言は増加。『原発から100キロ圏内にいる子供にはヨウ素剤を飲ませた方がいい。とろろ昆布があれば食べて』という“指南”以外にも、『スーパーで客がすごい勢いで食料を買いあさってる』『脱出できる方は今すぐ新潟から西へ避難を』と混乱をあおるような書き込みも広がった。」
LPガスが燃焼しただけではほとんど有害物質は出ないようですが、あの大規模火災で真っ黒な煙に巻かれないように気をつけることはごく当たり前のことです。LPガスにも添加物が含まれていて、また建物など周囲にまで火災が広がり、燃焼した結果、どのような物質が発生するのかわかりませんし、不完全燃焼すれば有害な一酸化炭素が発生します。
”デマ”が広がっている最中に、メルトダウンが起きていたことも今では周知の”事実”。
ヨウ素剤やとろろ昆布についてはむしろ的確なアドバイスとすら思えます。
「スーパーで客がすごい勢いで食料を買いあさってる」というのは単なる事実を述べたもの。当時、蓮訪大臣は買い溜めをしないようにと呼びかけていましたが、原発の状況次第では首都圏でも屋内退避になってもおかしくない状況だったので、正当な行動であったといえます。
福島第一原発の事故「レベル8」格上げのデマ(ゆかしメディア2011/6/4)
「東京電力の福島第一原子力発電所の事故の国際的な事故評価尺度(INES)は最高レベルの「7」と設定されているが、「8」に引き上げるというデマ情報がツイッターで拡散されている。もちろん、レベルは7が最高で、8はない。」
福島第一原発事故で、レベル8という話は今日時点でもありませんが、上記記事が出た時点で、海外サイトではレベル8を新設する議論自体は既にありました。
IAEA:原発事故評価見直しへ 「レベル8」新設も(毎日新聞2011/6/22)
「東京電力福島第1原発事故を受け、国際原子力機関(IAEA、本部ウィーン)は原発事故の深刻さを示す国際評価尺度(INES)の見直しに着手する。現行の0から7までの8段階を細分化するなどして、事故による環境や健康への影響度をより実態にあった形で評価する考えだ。『レベル8』以上の新設や従来の『レベル7』までをさらに細かく分類する可能性がある。
IAEAの天野之弥事務局長は20日の閣僚級会議で『INESは重要な情報手段だ。しかし、福島第1原発事故については、INESの評価は役に立たないことが判明した』と述べ、INESの諮問委員会に尺度の改善を要請することを明らかにした。
福島事故は今年4月、史上最悪とされているチェルノブイリ原発事故(86年)と同じ『レベル7』に引き上げられたが、天野氏は事故の構造も周辺への影響度もチェルノブイリ事故に遠く及ばないとの見解を示してきた。評価尺度の細分化で両事故の深刻さの違いを明確にする狙いがありそうだ。
INESはレベル7の評価要件の一つとして『放射性物質ヨウ素131等価で数万テラベクレル以上の放射性物質の外部放出』を挙げている。福島原発の放出量はこれに該当するが、チェルノブイリ事故放出量の10分の1程度とされている。」
現時点では、福島第一原発事故は、チェルノブイリ原発事故より深刻度が低いとの認識が一般的です。ただし、放射性物質の放出量は、これまで発表があるごとに上方修正されてきたことも現実です。
もしも今後また大きな放出があれば、チェルノブイリを上回る可能性も残されています。
デマや風評が生まれる理由としては、状況がわからないこと、正しい情報が伝わらないことがあげられます。
福島第一原発周辺の避難区域の問題もそうでした。福島の学校の校庭の線量や、1ミリシーベルトか20ミリシーベルトかの問題もそうでした。各都道府県で計測している放射線量が、地上何メートルで測っているかの問題もそうでした。
食品の問題についていえば、暫定基準値の妥当性について、内部被曝の危険性について、当初から全く信頼できる情報がありません。
筆者は、セシウムについては、特定の種類を除き、野菜に関してはだいぶ安全性が高まってきたとは思っています。
しかし、それ以外の物質、プルトニウムやストロンチウムやテルル等々について、測定したという情報がまったくありません。
野菜からセシウムが検出されなくなり、出荷制限が解かれたとしても、半径60キロメートル地点の土壌でストロンチウムが検出されている以上、正しい情報はまったく知らされないままに食品が流通しはじめていると考えてしまうのは自然なことです。
「日本の農業は”風評被害”に負けない」(永峰栄太郎・河岸宏和 アスキー新書 2011)という書籍を読みました。
福島や茨城など各地の生産者、流通関係者の取り組みはよく理解できますし、共感できる部分もありますが、この本で著者は、
「放射性物質が付いた食品を食べたらどうなるのか、その前に放射性物質とは何なのかを明確にすべきです。
ヨウ素、セシウム、ウラン、プルトニウムなど、それぞれに直接人間が汚染されたらどうなるのか、人間が口に入れて食べてしまったらどうなるのか。まず危害を明確にすることが、食の安全を保証するうえで必要なことです。」(163ページ)と記載しています。
記載していながら、ヨウ素、セシウム以外の放射性物質に関して、実際に、農産物が安全なのかどうかの問題には全く触れていません。
農業者関係はなぜ、「プルトニウムを測定しろ、ストロンチウムを測定しろ」と言ってくれないのでしょうか。
著者には、”風評被害”と”実害”との言葉の区別をしていただきたかったところです。買い控えをしている消費者が”風評”だとは思っていないことを理解していないのでしょうか。
なぜ「日本の農業は”風評被害”に負けない」のか理解できなかったので(そうあってほしいと思いますが)、本はごみ箱行きです。
小名浜港、カツオの初水揚げ断念 風評恐れ(東京新聞2011/6/21)
「福島県いわき市の『県旋網漁業協同組合』は21日、同市の小名浜港で予定していた今シーズン初めてのカツオの水揚げを、仲買人らの間で原発事故の影響による風評を懸念する声があるとして断念、千葉県の銚子港に水揚げした。
カツオは、19日に茨城県の那珂湊沖約300キロの海域で取った約17トン。
同漁協の野崎哲組合長は『小名浜港から水揚げすると『福島県産』となり、買い手がつかないと判断された。残念だ』と話した。水産庁が現在、福島県沖で取ったカツオのサンプル調査を実施、近く結論が出る予定で、野崎組合長は『安全が確認されれば、状況は変わるはず』としている。」
魚については、ヨウ素、セシウム以外にどのような放射性物質が検出されるのか、されないのかについての情報がないばかりではなく、銚子漁港の魚は何県産の魚なのかわからないという、愚行を犯してしまいました。
漁業関係者が自ら、風評を作りだしているといっても過言ではありません。
「状況が変わるはず」ということはないでしょう。千葉県産の魚にまでグレーゾーンを広げてしまったのですから。
6月6日、原子力安全保安院による原発事故の報告書が公開され、事故から1週間で放出されたであろう放射性物質の核種と放出量の内訳の予測数値を公開しています。詳しい内容をどこの新聞・雑誌が報道したでしょうか。
筆者の知る限り、「AERA」2011/6/27号がその内訳を掲載しています。
東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故に係る1号機、2号機及び3号機の炉心の状態に関する評価について
キュリウム242、1000億ベクレル。
プルトニウム238、190億ベクレル。プルトニウム239、32億ベクレル。プルトニウム240、1.2兆ベクレル。
テルル129、3300兆ベクレル。テルル127、1100兆ベクレル。
ストロンチウム89、2000兆ベクレル。ストロンチウム90、140兆ベクレル。
バリウム140、3200兆ベクレル。
アンチモン127、6400兆ベクレル。
・・・etc.

現在、福島県だけではなく、茨城、千葉、東京など首都圏でも、鼻血・のどの痛み・あざ等々の症状が頻繁に報告されており、放射能との関係では”因果関係が不明”もしくは”デマ”ということになっています。
デマを広めることは差し控えたいと思いますが、もしもこれがデマでなくなった時には手遅れです。
